全国縦断GIS実践セミナー2007 酒田会場 セミナーレポート

全国縦断GIS実践セミナー2007 酒田会場

- 産・官・学 三位一体で地域情報化の促進を -

主催
NPO法人全国GIS技術研究会
共催
地理情報システム学会
後援
総務省、国土交通省国土地理院、山形河川国道事務所、酒田河川国道事務所、新庄河川事務所、財団法人日本地図センター、山形県、山形県市長会、山形県町村会、酒田市、鶴岡市、庄内町、三川町、遊佐町、山形県中小企業団体中央会、東北公益文科大学
開催日時
平成19年8月29日(水)
会場
東北公益文科大学「公益ホール」
酒田市飯森山三丁目5番地の1 TEL 0234-41-1065
セミナープログラム

主催者挨拶
東北GIS技術研究会 海藤健治 会長
ご挨拶
国土交通省国土地理院地方測量部 山本国雄 部長
政策講演
「ユビキタスネット社会に向けたGIS研究開発について」
総務省情報通信政策局宇宙通信調査室 松沢一砂 課長補佐
基調講演
「地理空間情報活用推進基本法とGISの今後」
奈良大学地理学科 碓井照子 教授
講演
「庄内平野における農業GIS」
山形県立農業大学校 小田九二夫 教授
講演
「高校生によるまちづくりプランの提案」
山形県立酒田工業高等学校 1年 土木システム課 生徒代表2名
展示コーナー
GISを使ったシステムや関連ツールの展示

GISの最新動向を知る

東北公益文科大学NPO法人全国GIS技術研究会主催の全国縦断GIS実践セミナー(以下、本セミナー)における5番目の会場となった酒田会場。会場の東北公益文科大学は晴天に見舞われ、本セミナーの会場を見上げたとたん、今日は天気予報の気温28度以上に暑(熱)くなるのではないだろうかという予感がした。

国土交通省国土地理院地方測量部 山本国雄 部長平成19年8月29日。この日は行政をはじめ、業界関連企業、そして一般からも参加者があった。結果的にはGISに携わっている、若しくは関心のある259名が参加し、大盛況のうちに幕を降ろした。来場者にとっては、かなり内容の濃い3時間半だったのではないだろうか。そんな素晴らしいセミナーに参加出来た一人として興奮が冷めないうちに、次ページより本セミナーのレポートをお届けしたいと思う。

次ページからは総務省情報通信政策局宇宙通信調査室 松沢一砂 課長補佐(以下、松沢氏)による政策講演「ユビキタスネット社会に向けたGIS研究開発について」のレポートをお届けします。

ネット社会の行き着く先は、ユビキタスなのか

総務省情報通信政策局宇宙通信調査室 松沢一砂 課長補佐(以下、松沢氏)による政策講演「ユビキタスネット社会に向けたGIS研究開発について」大きく分けて3つのテーマでお話いただいた。

  • 地理空間情報活用推進基本法
  • 総務省における次世代GIS研究開発
  • 準天頂衛星

総務省情報通信政策局宇宙通信調査室 松沢一砂 課長補佐まず、冒頭では、セミナー当日に施行となった「地理空間情報活用推進基本法(NSDI法)」について分かりやすくまとめられた資料を用いて解説していただいた。本法律については、当社Webサイトにおいても関連する記事を公開しているのでそちらを参照していただきたい。

次に、携帯電話などのモバイル端末による次世代GISの研究開発の成果についてお話をいただいた。この、総務省による研究開発は平成15年度から平成17年度までの3年間実施された。研究開発の目的としては、移動体を含む多様な利用環境において3次元の空間データを容易に利用可能にする「次世代GIS」の基盤技術を確立する事であったという。研究結果としては、非常に高度な技術が多数確立された。本研究開発の詳細については、以下の総務省Webサイト内におけるページを参照していただきたい。

次世代GISの実用化に向けた情報通信技術の研究開発 | 総務省

最後に、平成21年に初号機の打ち上げを目標としている「準天頂衛星システム計画」についての推進体制と計画、そして現在の取り組み状況等が発表された。これは、「準天頂衛星」と呼ばれる高仰角な人工衛星を用いて、現在の「GPSを補完」する事を目的とした計画である。本計画に関しての詳細は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)による以下のWebサイトを参照していただきたい。

JAXA 準天頂衛星を利用した高精度測位実験システム

最前列に陣取る高校生を意識してか、専門用語は極力控え、より噛み砕いた柔らかい表現を多用するなどの気遣いが感じられた。その甲斐もあってか非常に分かりやすい内容であったと思う。

次ページからは奈良大学地理学科 碓井照子 教授による基調講演「地理空間情報活用推進基本法とGISの今後」のレポートをお届けします。

NSDI法の核心に触れる

奈良大学地理学科 碓井照子 教授奈良大学地理学科 碓井照子 教授(以下、碓井氏)による基調講演「地理空間情報活用推進基本法とGISの今後」では、本セミナー当日(平成19年8月29日)の施行となった「地理空間情報活用推進基本法(以下、NSDI法)」に焦点をあて、本法律について掘り下げていく内容の講演だった。筆者が碓井氏の講演を聞くのは、これでもう何度目だろうか?物腰柔らかでありつつも力強い口調で、そのするどい視点からGISの本質を語る講演は、いつ聞いても本当にワクワクさせられる。聞き終わった後には、はるばる遠方まで足を運んだ甲斐があったと充足感で一杯になる。碓井氏は本当に聴衆のモチベーションを上げるのがうまいなと思いつつ、今回のテーマに耳を傾けてみた。

NSDI法の経緯、そして重要性について、GIS先進国である米国での事例を用いながら分かりやすく説明していただいた。 NSDI法の施行により、以前からもよく言われていたが、いよいよ地方自治体においても「基盤地図情報整備に関する部署が必要」というスライドに目が止まる。正直な所、測量業界は地図(地形測量)の重複整備で飯が食えていたという事実が少なからずあったかもしれない。しかし今の時代、そのままで良いわけがない。

自治体内に「地図管理部署」を設置し、そこが自治体全域のシームレスなデジタル地形図を整備・管理する。そして地形測量を伴う業務発注時には、その地図データベースから必要部分を切り出し、その地図をベースにし、現地において変化のあった箇所のみ調査、補足測量する。そして調査の結果、更新された箇所を共通地図データベースへ反映させる。そして最新版へと更新された地図データベースを業務に利用する。あくまで理想論という感は否めないが、やはりこれが「Better」だと個人的には思う。

何にでも当てはまるが、「重複、冗長」っていうのは良いものではない。NSDI法の施行により、スマートな自治体行政の運営に、また一歩近づけるのかな・・・と感じた。

その後も。NSDI法を柱に、GISアクションプログラム2010、不動産登記法の改正、都市再生街区基本調査、諸外国の事例、そしてGIS関連の技術資格に関する動向と本当に盛りだくさんの内容だった。

余談ではあるが、高校生が「まちづくり」についての講演を行うと知った碓井氏が急遽、まちづくりに関するスライドを冒頭に差し込んで、本題に入る前に15分ほど話していただいた。筆者としては、手元にある資料以外の話という事で、おまけ的感覚で楽しめたハプニング(?)だった。その結果、公演時間自体を押してしまったわけでもあるのだが。後半は、時間もなかったという事で、かなり飛ばし気味だったが、限られた時間内に出来るだけ多くの情報を各地から集まった聴衆に伝えたいという碓井氏の姿勢が伝わり、いつもの事とは思いつつもそのサービス精神には頭が下がる。

次ページからは山形県立農業大学校 小田九二夫 教授による講演「庄内平野における農業GIS」のレポートをお届けします。

まさに実践!!百聞は一見にしかず

山形県立農業大学校 小田九二夫 教授(以下、小田氏)による「庄内平野における農業GIS」はGIS実務者による講演という事で、本セミナーのタイトルにも含まれている「実践」とうい部分に最も適している内容だったのではないだろうか。

  • GISを利用した農作物の食味向上の取り組み(リモートセンシング技術との組み合わせ)
  • GISを利用した農薬使用のトレーサビリティの取り組み(GPSデータの記録システムを利用して)

スライドに交えて、実際に使用しているGISを動かしながらの講演は、実に興味深い内容であった。リモートセンシングによる作物の糖度推定の事例や、潮風害被害調査結果と衛星画像によるリモートセンシングの事例、無人ヘリ搭載GPS機能を利用した省力的な記録システムのデモを実演など、小田氏のGISに対する熱意と確かな技術力を基盤とした多種多彩な事例の数々は、GIS実務者のみならず、一般の方々にも確かなインパクトを与えていたように感じる。また、そのスムーズな手さばきに、GISがいかに便利なもので使いやすいものであるのかという事を聴衆に実証して見せたのではないか。まさに「百聞は一見にしかず」だった。

最後に農業GISを応用した「生き物(カブトエビ)調査結果」も披露していただいた。来場者は皆、GISの可能性、発展性の一部を垣間見る事が出来たのではないだろうか。

次ページからは山形県立酒田工業高等学校 1年 土木システム課 の生徒お二人による講演「高校生によるまちづくりプランの提案」のレポートをお届けします。

新しい風を入れたい

本セミナーの最後を飾ったのは、山形県立酒田工業高等学校1年土木システム課の生徒2名による「高校生によるまちづくりプランの提案」だった。高校生が発表者として講演、そしてセミナー受講側としてクラス40名参加という全国縦断セミナーにおいて、初の試みとなる。

山形県立酒田工業高等学校 1年 土木システム課 生徒代表2名による発表まず、単純に驚いたのがスライドの見せ方の工夫だった。PowerPointを使用しているようだったが、その見せ方のセンスには脱帽させられた。PowerPointを使い始めたばかりの人に良く見受けられるのが、アニメーションの多用だ。最初は、面白くて随所に盛り込むが、結果的に見辛く、下品なものに仕上がりがちになる。使い続けるうちに、アニメーションは多用せずに要所要所に効果的に使うのがエレガントだという事に気づき始める。最終的にはシンプルかつインパクトのある流行の「高橋メソッド」に落ち着いたりもする。(筆者の場合がそうだったのだが・・・。)目から鱗的なその見せ方について、ここでお伝え出来ないのがもどかしい。

当然、見せ方については付加価値的なものであり、核心の「まちづくり」についての提案がまた素晴らしかった。筆者が高校一年の頃を遠い目をしながら思い出してみたりもした。高校一年当時の私では、とてもここまでの事は出来なかったなぁ・・・と。その分析力、提案力には「脱帽」以外の文字が頭には浮かばない。ここまでの提案を指導した担当教員のGISに対する熱意・知識・技術力、そして「まちづくり」の提案に見られる地元愛は相当なレベルであるのだろうなと思い、そんな師の元で学べるという環境に羨ましささえ感じた。もし、彼らと同じ年頃に今のレベルのGISと出会っていたならどうだったろう?そんな思いがよぎった本当に素晴らしい講演だった。

[hino-ss Inc.]

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